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鳥籠屋

No  393

Love is Here. 胎動編 12

 中々ここに来れない日々で申し訳ございません
 それでも、ここに足を運んでくださる方々には感謝しかありません
 久々の更新です
 よろしければ、ご覧ください



 アスランがルージュのターゲットである貴族の邸宅へ着いたのは日没の時間だった。シンから渡された兵の配置図を見て多少の手直しをし、現場の警備を徹底させる。そんな時だった。屋敷内、玄関ホールを支える大きな柱にメッセージカードが突き刺さる。向きからして裏の木々からだと分かるそれを、アスランは手に取る。
『ターゲット不在のため、今回はお暇いたします。  ルージュ』
 それを読んだシンが隣で悔しがっているのを見ながら、アスランは心から安堵した。


 キラに任命され、仕方なく任務に就いたルージュ対応警備隊隊長。行う前は辞めたいと思ったこともあったが、行ってみてルージュと会話をするうちにルージュの人柄に興味を持つ自分がいた。
『辞めたいなら辞めろ!』
 そう負われて、自分が思っている以上に今の任務が嫌いじゃないことも気づかされた。出来ることならずっとこの任務について助けてやりたい。そう望む自分がいた。



次のシリーズに続く


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No  392

Love is Here. 胎動編 11

 日中は暑い日もありながらも、夜は、秋らしくなってきましたね
 久々の更新で、毎度申し訳ございません
 よろしくお願い致します




 『辞めないよ。』と背にかかる穏やかなアスランの言葉がカガリの心を軽くしてくれる。ずっと抱えていたものがすっきりしていく事を、カガリは自覚した。もっと素直に言えたらいいのに…と思う反面、敵にそんなことは必要ない!と思う自分もいる。そんな葛藤をしていると再び背にアスランの声がかかる。
「伝えることは伝えたからな、これで戻るよ。」
 カガリはハッと現状を思い出しアスランへ向き直る。
「おまえ、どうやってここに来たんだ?」
「王城の上から来ただけだが。」
 カガリの質問にアスランはケロッと応える。今二人がいる場所は、都で最も高い建物・王城の上階、都を一望できる高さに位置している部屋なのだ。
「あ、危ないじゃないか。ここから落ちたら死ぬぞ。警備だって一番徹底していて危険だ。」
 危ない事を真剣に話しているのに、当のアスランはポカンとした表情でカガリを見てくる。
「なんだ、心配してくれてるのか。」
「ち、違う!」
 アスランの言葉にカガリは顔を背け否定する。確かにそうだが、正面から言われたら素直に認められるわけが無い。そんなカガリの背に「はは…」とアスランの笑みがかかる。
「何がおかしいんだ。」
 カガリは顔だけをアスランに向ける。にらみを利かせているが、効果は全く無い。アスランは口元に浮かぶ笑みを手で隠しながら、カガリを見る。
「いや、なんでもない。元々、隠密行動していた時があったから、これぐらいなんとも無いんだ。」
 瞳を伏せながら話すアスランにカガリは身体を向け直す。
「隠密?」
 カガリが聞きなれない言葉を聞き返すと、アスランは自分が言ったことに気づき少し気まずそうに口を噤む。
「アスラン?」
「まぁ、小さい頃の話だ。」
 それ以上は言えないという空気がアスランから感じられ、カガリは口を止める。
「じゃあ、これで…」
 そう言って、アスランは静かに身を翻す。が、何かを思い出したのか足を止めると、再びカガリへと向き直る。
「一番言いたかった事を忘れてた。」
 アスランの言葉に心当たりが無いカガリは首を傾ける。
「ニコルから受け取った。マントを、ありがとう。」
 すっかり頭から抜け落ちていたマントの話を出され、カガリは慌てて的外れな事を言ってしまう。
「あ、あれは、雨で濡らしたから乾かしただけで…」
「綺麗になってたぞ、君が洗ってくれたんだろう?」
 アスランのお礼に、どういたしましてといえばよかったのに、何故か乾かしたといってしまったが、話を合わせてくれたのか、アスランは穏やかな表情をカガリに見せる。
「いや…」
 カガリは、アスランの素直なお礼に、言いごもる。
「ありがとう。それだけ、言いたかったんだ。」
 感謝の気持ちが伝わる優しい笑みを見せられ、カガリは何も言えなかった。アスランもそれ以上は何も言わず、テラスの手すりに足をかけると静かに下へと降りていった。
 アスランは、敵だ。自分を捕まえるために、彼はその任に就いている。何度も自分に言い利かせてきた。だけど、実際は何の目的があるかはわからないが、こうして自分を助けてくれる。それが、嬉しいと感じる自分がいた。
 小さい頃隠密だったといっていたアスラン。少年のような笑みと、穏やかな笑みを見せてくれたアスラン。当然だが、カガリはアスランの事を何も知らない。
 アスランをもっと知ってみたい。
 そう思う心が生まれ始めていた。


続く

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No  391

Love is Here. 胎動編 10

毎度ご無沙汰しており、申し訳ございません。
4月から生活画ガラリと変わり、日々追われておりました。
新しい環境に慣れるにはまだまだ時間が掛かりそうです(・・;)
焦らず、けれどしっかりとやっていきたいです。





夕暮れ時の王城。黄昏色に染まった王城の上階にカガリの部屋はあった。
 そろそろ時間だな。
 室内空から見える空の色を見て自分が指定した時間が近づいている事を確認し、部屋の隅に隠しているルージュの衣装を出す。これを着て、その上に大き目の動きやすい庶民向けの服を着て、現場に近くで上だけ脱いでルージュになるのがいつもの流れだ。カガリが、自分が着る服を用意しようと立ち上がったときだった。カタリ…と耳に音が届き、音がしたテラスへと足を向ける。
 月が見え始める空の下、テラスの入り口で足を止めテラス内を見渡す。
 別に何も無いな。
 テラス内に何も無い事を確認した時だった。上からストンと誰かが降り立つ。それが自分の知る人物だと判断するのに時間はかからなかった。
「おまえ、何で…!」
 降りてきた人物アスランは、驚くカガリの口を掌で押さえると、人差し指を立てて静かに、と合図を送る。カガリが一度頷くと、それを了解と取りアスランはその手を静かに離した。
 アスランの前に立つカガリは、目の前に立つアスランを信じられないと言わんばかりに見てくる。
「おまえ、何でここに?」
 驚き自分を見るカガリに対峙し、アスランは用件を口にする。
「行っても罠だけだ。今日のルージュのターゲットは、既にラスティが捕まえてる。」
「え?」
「だから、今日はやめたほうがいい。」
 静かに諭すように伝えてくるアスランを見て、カガリは睨む。
「罠か?」
「どう取るかはまかせるよ。」
 用件は伝えたからと、アスランは早々に帰ろうと足を動かす。その背に、カガリの低く探るような声がかかる。
「おまえ、わざわざそれを伝えにここへ来たのか?」
 進めようとした足を止め、アスランは再びカガリに向き合った。
「…、この間、ラスティに捕まりそうになった者がいたそうだからな。そうならない様、とりあえず連絡だ。」
「…っ!」
 危ない事をしないでほしいと皮肉交じりの言った言葉に、カガリは悔しそうに顔を背ける。それを見て、アスランは不思議を口元を緩ませた。
「初めてだな。」
「何?」
 カガリが、眉根を寄せてアスランを見る。
「ルージュが盗む前にターゲットが捕まえられた。」
「!」
「それを望んで危ないことまでしてルージュになっているんだろう?」
 カガリは図星とつかれ、カッとなる。
「う、うるさい!大体、おまえいつまで私に関わるつもりだ!?」
「は?」
 突然の話題に、アスランは首を傾げる。
「ルージュ対応警備隊隊長は大変だから辞めたいんだろう?だったら、さっさと辞めろ!」
 先日の出来事でも行っていた『嫌なら辞めればいい。』とカガリが言っていた事。ようやくアスランはカガリがなぜ辞めろと言っているのかが理解できた。
 ああ、そういうことか。
 用は自分を気遣ってくれているということと、ふて腐れているのだと納得してカガリを見る。
「辞めないよ。」
「え?」
 予想外の穏やかなアスランの返事に、カガリはアスランを見る。
「俺が辞めたら、誰が君をフォローするんだ。」
「誰も頼んでない!」
 笑みを浮かべて言うアスランが悔しくて、カガリは声を張りアスランに背を向ける。アスランはそんなカガリを見ながら、素直な自分の気持ちを伝える。
「冗談だ。初めて自分から辞めたくないと思った任務だからな。辞めないよ。」
 少し間があって返ってきた言葉は、ぶっきら棒なけれど優しい言葉。
「あ、後で辞めたくなっても知らないからな!」
「そうなったら、そうなった時に考えるよ。」
 アスランは心に宿る温かな気持ちを感じながら、カガリの優しさに感謝した。


続く

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No  390

Love is Here. 胎動編 9

 前回に拍手をありがとうございます
 秋にプチ、来年オンリーが開催されるそうですね
 友人が参加予定とのことで、今から楽しみです






 王城手前、人に目撃される事を避けるため人目につかないで姫の下へ行けるルートを選択する。アスランはこれから進む場所は狭く暗い場所が続くと考え、邪魔と判断し背につけていたマントを外した。
 先ほどニコルから渡された布の袋に入っていたマント。その少し前、姫に会った時、その手に持っていた事を思い出し、何も言わず去るニコルの背を見ながら姫からだと悟った。
 ルージュに手渡した時よりも綺麗になっていたマント。普段乱雑に扱っていた物を綺麗にしてくれた姫へ感謝の気持ちが湧き上がる。
 お礼を言いたいな…、と思うと同時に、いつもの姫が頭に浮かぶ。
 姫に会うとなると、また警戒心丸出しで睨まれたり怒られたりするんだろうな…
 憂鬱な気持ちになるどころか、それも楽しみだと見え隠れする自分の気持ちを自覚し、口元を緩ます。マントを外し人目につかない場所に隠すと、アスランは王城裏から人目を避けながら目的の場所へと足を向けた。
 秘密通路や天井裏など足元がおぼつかない危険な暗闇の中、気配を殺して前へ進む。
 昔を思い出すな…
 蘇る感覚を感じながら、今はもう無い昔を思い出す。
 もう、何も残っていないと思っていたけど、役に立つもんだな。
 昔の経験が役立って、今こうしている事に少しばかり感謝しながら、目的の場所を目指す。そんな中、ふと耳にピアノの旋律が届く。誰かが演奏しているのだと思いながら、今日久しぶりにあったニコルを連想する。同時に、ニコルと楽しそうに話していた姫の姿を思い出し、あの時一瞬感じた心の取っ掛かりを再度思い起こす。
立場上仕方がないとは言え、もう少し警戒心むき出しで対峙することが何とかならないものか…
 もう少し穏やかな表情が見たい、出来ることなら笑って欲しい。ニコルと笑っていたあの表情をもう一度見たいと願う。自分に向けられる表情は、いつも怒っているから余計に。
『辞めたいなら辞めろ!』
 ふいに先日姫から言われた言葉が浮かぶ。
 あれは、どういう意味だったのだろう…
 確かにあの時、自分はルージュ対応警備隊隊長の任に就いた事を話していた。だが、それで姫が怒るとは考えにくく、アスランは頭を悩ます。姫が何を言おうとしていたのか、アスランには分からなかった。


続く


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No  389

Love is Here. 胎動編 8

 毎度、ご無沙汰しており、申し訳ありません
 一年過ごした場所から引っ越ししまして、漸く荷解きも終わりかけてまいりました
 一年とは言え、多くのものを得ることができた時間は、今は少し寂しさを抱かせてくれています。
 振り返れば辛いことも多くあった時間でしたが、それ以上に自分の人生を豊かにする学びや出会いがあり、一年やり遂げた自分を少しは褒めてやろうかと思っています
 自分で選んだ選択をもう少しでやりきれそうです

 さて、久々アスカガです
 今月はあと1回〜二回くらいは更新できると思います
 よろしかったらお時間ある際にお立ち寄りくださいませ





 アスランは、ルージュが予告状を出した貴族の邸宅に既に到着しているシンと合流するため馬を走らせていた。その間、思い出していたのはラスティの言葉だった。
 あの日、カガリに心当たりの無い怒りをぶつけられた後戻った騎士団で、アスランは偵察から戻ったラスティと話をしていた。
『おまえのカン、大当たりだな。』
 都の宝石や絵画の取締りを重点とした任務についているラスティは、先日ルージュが盗みに入った貴族に共犯がいる事をアスランから聞き、すぐに行動に移していた。以前から怪しいと睨んでいた貴族の邸宅に忍び込み探り当てた証拠を目にした際、誰かにつけられていた事を、アスランに話す。
『済んでのところで逃げられちゃったんだよなぁ。もしかしたらルージュかも知んないぞ。』
 悔しがりながらも笑って告げられた言葉に、アスランは肝を冷やした。ラスティの後を付けていたのは、間違いなくルージュだろう。ラスティの代理でキラに書簡を渡しに行った際、アスランはうっかりラスティの話をカガリの前でしてしまった事をずっと気にしていた。
 多分、今回の予告状はそれが影響しているだろうな。
 自分がミスしてしまったことから、キラにあれだけ言われていたのにもかかわらず、カガリに危険な行動をまた取らせてしまう自分を叱咤した。
 貴族の邸宅に着くと馬を待機していた兵に預ける。シンがいる場所に向かいながら目に入る騎士や兵の数に、普段ルージュ対策で集められる人数にしては今日はやけに騎士や兵が多いと感じながら邸宅内へと入った。
「あ、アスランさん。」
 すでに現場についていた副隊長シンが、玄関ホールで兵と打ち合わせをしていた。
「シン、現状は?」
「いや、それが…。」
 言葉を濁して、屋敷の中へと視線を移すシンに、アスランは首を傾げる。
「どうした?」
「はい。実は今…」
 シンが現状を伝えようと口を開いたときだった。ホール奥から、どやどやと多くの騎士が出て来たため、アスランは視線を向ける。騎士たちの先頭には、アスランが見慣れた同僚の姿があった。
「ラスティ。」
 アスランの声に、ラスティも入り口近くにいるアスランの姿を確認する。
「よ、アスラン。」
 アスランに手を振ると後ろの騎士たちに指示を送りアスランへと歩み寄る。
「何かあったのか?」
 アスランもラスティに歩み寄りながら、外へ出て行く騎士たちへと視線を流す。
「たった今、ここの貴族を捕まえたところだ。宝石の贋作作り並びに売買を行っていた罪でな。」
 ラスティはニッと笑って、アスランを見る。
「ルージュにターゲットにされたとは言え、盗みに入られる前に捕まえられたなんて初めてだからな。やったって感じだぜ。」
 ルージュに狙われた貴族は、裏で必ず悪さをしている。そう言われているにもかかわらず、今までルージュが盗み出すまで都を管轄する騎士は証拠が無かったため動く事が出来なかった。
 素直に喜ぶラスティに対して、シンは静かにラスティの話を聞くアスランを見るだけだ。
「じゃあ、俺は一旦戻るから後は頼むな、アスラン。」
 アスランの肩をポンッと叩きながら、ラスティは外へと出て行った。残ったシンが、アスランを遠慮気味に見る。
「そういう訳なんスよ。今日、どうしますか?」
 シンの質問ももっともだが、アスランの頭の中は今それどころではなかった。
 たった今起こったこと事が姫に伝わるとは考えにくい。おそらく、今ターゲットの貴族が捕まったことをルージュは知らずにここへ来るだろう。それは、余りにも危険すぎることだ。だが、だからといってルージュが来る可能性があるのに、理由も無くシンたちを引かすわけにも行かない。
 まずは、ルージュを止める事が先決か。
 優先順位として一番に行うべき事は何かを判断し、行動に移す。
「シン。俺は、ちょっと用事があるから少し抜ける。」
「は?ここはどうするんスか?」
 突拍子も無い現場を離れる宣言をするアスランに、シンは呆気にとられる。
「お前にまかせる。」
「は?嫌ですよ、俺。出来るわけ無いじゃないですか。」
 すでにここを離れる準備をするアスランにシンは説得する。
「出来るさ、がんばれ。」
 シンの説得など耳に届いていないのかその肩をポンと叩き、アスランはその場を離れようと歩き出す。
「ちょ、ちょっと、アスランさん!」
 後から抗議するシンの声が聞こえたが、それに応える余裕も無くアスランは足早にその場を離れた。


続く

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